労働者としての義務

「社員が失踪してしまった」という社長からの報告を聞いた時は本当に驚きました。運送会社の社員が、「荷物を満載にしたトラックのエンジンを掛けたままにしていなくなった」というのです。社長が頭をかかえているのが目に浮かびました。社員の失踪などもちろんザラにあることではないでしよう。とはいえ、珍しいものでもないようです。長期無断欠勤となれば懲戒解雇処分の正当な理由となります。ただし、いささか面倒な手続きが発生します。また、退職扱いとなれば煩雑な手続きは避けられます。ただし、退職金の支払が必要とな ります。

従業員は、労働基準法等により諸々の労働者としての権利が認められています。しかし、一方で労働契約を結び従業員になると、会社と従業員との間で信義則に従う義務が発生します。従業員として勤務する関係になったのであるから労働義務があり、従業員は労働契約により約束された労務の給付義務を負うことになります。例えば始業時対に遅れることは、労働契約に定める約束の時間に労務を提供しないという債務不履行(約束違反)にとどまらず、それは他の労働者にとっても、共同作業が行えないという結果を招き、あるいは会社の業務を停滞させ会社の対外取引の信用を害することもあり、職務規律を乱し、職場のルールにも違反することになります。

労働者としての義務は数多くあります。例えば、業務命令に従う義務、職務専念義務(職務怠慢の禁止)、人事権に従う義務、職場労働環境保持義務などがあります。また、退職後においても義務は生じます。不正競業防止法においては、会社内外を問わず、会社及び取引先等の機密、機密性のある情報、企画案、ノウハウ、データ、 ID,パスワード、及び会社の不利益となる事項をほかに開示、漏洩、提供することが禁止されています。

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