サービス残業に対して割増賃金を支払う義務があるのか

会社の命令に基づかない自発的な残業を「サービス残業」といわれています。この言葉は法律上の用語ではありません。時間内で片付かない仕事を、自発的な残業によって処理し、自発的なものであるのであえて時間外手当を請求しない、また会社も、うすうす知ってはいるが会社が命じたものではないということから時間外手当を支払わない、というのが「サービス残業」の大まかな定義でしょう。これに対して行政は、「サービス残業」も含めて割増賃金の支払われない残業を「賃金不払残業」といっています。

しかしながら広い意味での「サービス残業」に対する法的な割増賃金の支払義務についていえば難しい面もあります。仕事熱心な労働者は、勤務時間外でも通勤の途中でも仕事をするので会社が通常の注意をしても知りえない残業もあります。それでは、会社として全く割増賃金を支払わなくてもいいのでしょうか。

平成13年に出された厚生労働省労働基準局長の通達に「労働時間適正把握基準」があります。この基準には、始業・終業時刻の確認及び記録、自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置を定めています。このことにより使用者が労働時間を適正に把握する責務をあらためて明らかにしています。本来、労働時間は使用者が把握すべきであるのに、勤務の実態に目をつぶり、自己申告制を理由に割増賃金を支払わないということは、「労働時間適正把握基準」に反する状態にあるということになります。

したがって、必要な業務については会社が適切な残業命令を出すべきであり、自己申告については「労働時間適正把握基準」に基づいて適正な措置を講ずる必要があります。いずれにしろ、企業は命令を曖味なものにしておいて、暗にサービス残業を期待しようとする傾向があることから、形式的な考え方のみでは、処理できない面があります。

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